Thoughts on Flash 超意訳
かどやんです。
先日、スティーブ・ジョブスが、iPhoneのアプリはFlashのコンバートでは作らせない!と言って大騒ぎになりました。
Appleの言い分も、Adobeの言い分も、それぞれの立場から見ると納得できなくはないんですが、どっちにしても、結局はApple vs Adobeの利害対決であって、開発者はおいけぼりなことは間違いありません。 開発者は代理戦争させられてるみたいなもんであるという気がしますが、どうでしょうか。 自分は、Objective Cの解説本を見て絶望したので、そうそうにあきらめ、HTML5+CSS+JavaScriptでの開発を始めました。
そんなジョブス氏の言い分(Thoughts on Flash Flashについての考え)がありましたので、超意訳してみました。 序文は、いかにAppleとAdobeが仲良くやってきたかということを切々と語っています。 その続きは、おおよそ以下のとおりだと思います。意訳なので、詳細はご勘弁を。
概要としては、
- Flashはオープンじゃない。Adobeの対応如何で、Appleの技術が活かされない可能性があるのは許せない
- Flashは重くてバッテリを食う
- Adobeって、Macに冷たいよね?やるきあんの?
- Flashなんかなくたって、もういっぱいコンテンツあるもん
- ザクとは違うのだよ、ザクとは!
…ざっとそんな感じでしょうか(冗談です)。
その1:「オープン」であること
Flashは、Adobeが全てをコントロールしていて、オープンではない。 Appleは、Flashを使うよりは、HTML5やCSS、JavaScriptといったオープンなウェブ標準技術を使って、速さや省電力性を、iPhoneなどのモバイルデバイスに搭載していく。 HTML5は、AppleやGoogleなど多くのメンバーが参加し、プラグインに頼らずに、先進的な画像効果や文字などを実現する、新しいウェブ標準である。Appleは、完全オープンソースのHTML5レンダリングエンジンであるWebKitを開発した。GoogleがAndroidのブラウザに採用した他、Microsoftの以外の多くのスマートフォンで、Webkitは利用されている。オープンにすることで、Appleは、モバイルデバイスのウェブブラウザの標準を作り上げたのだ。
その2:「フルウェブ」であること
Adobeは何度も、ウェブの動画の75%がFlashであることを理由に、Appleのモバイルデバイスは「フルウェブ」…全てのウェブコンテンツにアクセスできる…ではないと主張してきた。 が、Adobeは、それらほとんど全てのビデオが、iPhoneなどで視聴可能なH.264といった最新の形式であることに言及しない。 ウェブ動画のおよそ40%を占めるYouTubeは、Appleのモバイルデバイスに標準で入っているアプリケーションで見ることができ、Appleユーザーは、その他動画サイト、SNS、ニュース、スポーツ、自然、その他諸々の動画が見られないということなどない。 またAdobeは、Flashゲームができないとも言っている。事実そうだが、幸い、50000以上のゲームやエンタメタイトルがApp Storeから無料でダウンロードできる。iPhoneやiPadでは、他のどのデバイスよりも、さらに多くのゲームが遊べるようになっている。
その3:安定していて、安全で速いこと
シマンテックによると、2009年、セキュリティについてのワーストレコードをあげたものの中に、Flashを挙げた。 Flashは、Macのクラッシュの原因のナンバーワンだ。我々も、Adobeとともに不具合の修正を長らく行ってきたが、いまだに終わっていない。Flashを追加することで、iPhoneやiPadの安定性や安全性を保つために時間を裂くつもりはない。 さらに、Flashはモバイルには重い。モバイルデバイスで十分に動いているのを確認させろとAdobeに何度も要求しているが、先延ばしにされるだけで、いまだにそれを確認できていない。実装がうまく行ったら息が詰まるほどうれしいが、こんな状態で、一体誰がちゃんと動くと言えるのか。
その4:バッテリーが長持ちすること
モバイルデバイスで動画を再生する際、バッテリを長持ちさせるには、ソフトウェアではなく、ハードウェアでデコードする必要がある。そのため、モバイルデバイスには、多くの企業により標準化された、H.264のデコーダーチップが載っている。 FlashもH.264をサポートするようにはなったが、ソフトウェアでデコードするため、バッテリーを消費する。 例えばiPhoneをフル充電した後、H.264のビデオを再生させると10時間再生ができるが、ソフトウェアで再生をすると、5時間以下しか再生できない。その差は歴然だ。
その5:タッチ操作であること
Flashは、指を使ったタッチ操作ではなく、マウスを使ったPCでの操作に最適化されている。Flashサイトでは、ロールオーバーするとメニューがでてくるというのがよくあるが、Appleの先進的なマルチタッチ技術には、ロールオーバーという概念はない。タッチ操作のデバイスに対応させようとなると、そういった問題を解決するために、サイトを作り直す必要がでてくる。どうせ作り直すのであれば、開発者がHTML5やCSS、JavaScriptを使わないとどうして言えよう。
その6:最も重要な理由
以上の他に、最も重要な理由がある。 サードパーティによる非標準の開発ツールが、プラットフォームの向上と発展を阻害すると考えられることだ。開発者がサードパーティ製開発ツールに頼ってしまうことで、我々が如何に機能の向上を図っても、サードパーティが取捨選択した機能分しか、プラットフォームの利点を活かすことが出来なくなってしまう。 開発ツールをクロスプラットフォーム対応にした場合、さらに問題がある。 一つのプラットフォームに特化していないということは、つまり、多くのプラットフォームで共通した、最低限の機能の部分でしか開発ができないということだ。競合プラットフォームに対応するがために、我々の革新的な技術に対応できないということは、受け入れられない。 Flashのゴールは、iPhoneやiPadのためではなく、あくまでもクロスプラットフォームのアプリケーションの開発ツールであることだ。そして、Adobeは、Appleのプラットフォームについては、おそろしく開発速度が遅い。MacOSXがリリースされてもう10年は経つが、Adobeは、先日発表されたCS5で、ようやく完全にMacOSXに対応した。大手デベロッパーでは、一番最後だ。
我々のモチベーションは、最も先進的で革新的なプラットフォームを開発者に提供し、そこに向けて、すばらしいアプリケーションをどんどん送り出してほしい…それだけだ。 開発者が、もっとすばらしく、パワフルで、楽しく便利なアプリケーションを制作できるよう、プラットフォームの機能を向上させていきたい。 たくさんのすばらしいアプリケーションのおかげで、我々のデバイスが売れ、開発者の顧客はどんどん広くなり、ユーザーは、他のどのプラットフォームよりも多いラインナップでずっと楽しめる…みんなが幸せになれるのだ。
結論
Flashは、マウスとPCの時代に産まれた。Adobeにとっては成功したビジネスであろうが、それをPC以外に展開しようとしていることがどうも解せない。モバイルの時代は、非力なデバイスとタッチインターフェース、そしてオープンなウェブ標準によるものだ。Flashは、そのどれにも足りない。 多くのメディアが、次々とAppleのモバイルデバイスにコンテンツを提供していることが、ビデオやウェブコンテンツを見るのにFlashが必要ないということの証明である。 そして、App Storeにある、ゲームを含むグラフィカルでリッチな200000ものアプリケーションは、幾万もの開発者が、Flashなしで作り上げたものだ。
HTML5などのオープンな標準規格がモバイル時代を作り、モバイルデバイスを(そしてPCも)制するだろう。 おそらくAdobeは、Appleへの非難をやめ、すばらしいHTML5のツールの制作に注力してくるようになるはずだ。